2010年2月14日日曜日

地下鉄(メトロ)に乗って

浅田次郎の原作を読んだ後、映画を観た。

東京の地下鉄に詳しい(特に営団(現 東京メトロ)銀座線などで走っていた古い車両を知っている)世代には、なんともいえない懐かしさを覚えるだろう。

営団(確か正式名称は、帝都高速度交通営団という仰々しい名前だったと思う)の歴史の長さと、そこに刻まれている記憶を想うと、胸が熱くなった。

僕が上京し、東京の会社に就職したのは、1988年。当時渋谷まで東横で通っていたこともあり、時々、銀座線も利用していた。

その頃には、既にステンレスにオレンジのラインの新型車両が主流になっていたと思う。でも時には、黄色いボディの旧型車両に乗ることがあった。

銀座線(と丸ノ内線)には、第三軌条方式と呼ばれる、パンタグラフを持たない電車が走っている。線路脇の 3番目のレールから集電するため、このように呼ばれる。当時は、急なカーブでは、小説通りの耳障りな甲高い金属音がしていた。

今でこそ、冷房も当然のようにある。しかし、旧型車両は扇風機のみで、夏場は窓を全開にしていたので、余計にやかましかった。おまけに、駅に着く直前には、車内の明かりが全部消えて、暗い車内にドア付近の非常灯のみが灯るという、とても印象的な電車だった。消灯時間は駅によって異なり、一瞬の場合もあるが、しばらく真っ暗という場合もあった。

これは第三軌条の都合上、ホーム手前で、集電できない区間があることが理由だったと思う。今の車両は、おそらくバッテリーを積んでいるので車内灯が消えなくなったのだろう。

原作のラストでは、主人公の真次と父の確執が、その後どうなったかは描かれない。しかし、映画では、その後の様子が分かりやすく描かれる。

また、原作では、真次からヒロインである みち子への愛と共に、父への愛を取り戻して行く視点が中心なのに対し、映画では、ヒロインの みち子から真次への愛と共に、みち子の母への愛情も描かれる点が大きく異なっている。

映画では、真次を演じるのは、堤 真一。イメージ通り。(メガネは掛けていてほしかったが…)しかし、なんと言っても難しい役回りの 大沢たかお の功績が大きい。また、ヒロインみち子役は、これもハマっていて美しい 岡本 綾。

原作・映画とも、甲乙つけがたい。分かりやすいのは映画の方だが、原作も押さえておいた方がより楽しめるだろう。(というか、原作なしでは、映画の解釈も難しいかも知れない)

僕には、とても心に響くものがあった。しかし、女性である妻に言わせると、みち子のあの行動はあり得ない、という印象を受けるようだ。

これも男女の根本的な違いなのかも知れない。
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